LOVE NO CRY - katchaman/code

上出来だった

憶えてる？
三年前の今日
生きてきた中で
こんなに嬉しかったことはなかった
悦びに打ち震えた
心が躍った
それまで覆われていた雲が
一瞬にして晴れ上がった

「時間って

一体何だと思う？

…

それは全て

誰かが決めた概念だったり

周りと同じ時間を

過ごしてるから

そんな風に考えるんだ

君と過ごす時間

その一瞬一瞬

一瞬？

言葉にすれば

そうかもしれない

だから

それが概念

例えば

一秒の長さを

十年だと思い込む

一日過ごせば

永遠と呼んでも

過言じゃない

うん

そうだ

そう信じて

そう言い聞かせて

切ない気持ちを

軽減させてる

もう会いたい

既に会いたい

永遠を過ごしたはずなのに

何度も何度でも

永遠を重ねたい」

あの日の日記にはそう記してる
そう
やっとわかってきたよ
失ったんじゃない
得てきた
ずっと得てきたんだ
瞬間を積み重ね
永遠に成り得るほどの長い時間を

湖畔を歩き
ボートに乗り
顔見合せながらオールを漕いだ
眩しく水面が乱反射する中笑い合った
その瞬間に想いを馳せるだけでも
もう何年も生きられるだろう

本当に上出来だった
自分にとって

自らを失うほどに愛せた記憶は
生きてきた意味があった
うん
でも弱いから
どこかでまた寂しく思ったりするに違いない
その時は
楽しかった一秒を十年分に変え
満たされていた日々を永遠にし
覆いかぶさる雲を払いのけ
穏やかに晴れ上がった空
顔を上げて生きていく

おまえは最後に聞く
隣のあの子はどこに行ったの

すると私は答えるだろう
もう見えないよ
なぜならお前の中にいるからさ

お前の足は
あの子の足だ

がんばれ