最愛

有り得ないか?
「有り得ない」と笑うのか?


「有り得ない」と笑うは
“最愛”という言葉を
軽々しく使う自分自身を笑う


「有り得ない」と笑うは
“最愛”という記憶が
見当たらない自らの生き方を笑う





[ CINEMA ] 容疑者Xの献身


涙で席を立てずにいた。
よかった。
いい映画やったよ。
うん、ほんまに
白夜行」に並ぶ東野圭吾の胸を締め付ける
哀し過ぎるラブ・ストーリーやった。


主役は二人。
堤真一松雪泰子
福山も柴咲もかすむ好演。
原作の良さってのもあるやろうけど
二人の演技が映画を見応えのあるものにしてる。


堤真一は元々大好きな役者さん。
彼が出演してるだけでドラマも映画も観てしまうほど。
コミカルでもシリアスでも
観てるものをすごく引きつける演技力の幅の広さに感心する。
私的にジム・キャリーみたいな位置に存在する役者。


特筆すべきは松雪泰子
フラガール」以来、注目してるけど本作品で確信した。
年齢を重ねるほどに演技の上手さが際立つ。
こちらも私的に永作博美に並ぶ“歳取ってからが素敵女優”やと思う。
一時の浮足立った人気ぶりの下降から上昇までのこの間の
彼女の人生を垣間見る。


後ね、蛇足ではありながら北村一輝が意外に濃いキャラ消せてて
そんなんも出来るんやと思った。


内容に関してはネタばれるので触れないけど
ラストの救われなさは本当に哀し過ぎる。
それやからこそリアルに伝わるんやろうけど
石神哲哉に最後まで花岡靖子を守らせてあげたかった。
思いは通じても
“守る”ことが彼にとって目的であり意義であり
生きてきた、生かされてきた最大の理由であって
その叶わなさに自らを同化させてしまい
涙が止まらなかった。



触れ合えているような錯覚


観るもの
聴くもの
食べるもの…
記憶を追えるうちはそれでいい


観るだろう
聴くだろう
食べるだろう…
こうして後どのくらいかは出来るだろう


やがて
追うものが薄まりいく中で
新たに出来ずにいる錯覚は
離れた距離と時間を
自分に教える